「……はぁ……」

 体育館から出て、友達とも別れて一人になれる場所を探した。

 外に出て、やっと静かな場所に来たら今度はため息が止まらない。


 本当は断られるって分かってた。

 負けたからとか、そういうの関係なく。

 だって、この間キスしようとしたときに割って入ってきた渡瀬に抱きつかれて、月見里は顔赤くしてた。

 怒ってるとかじゃなくて、ただただ恥ずかしそうに。


 ……ついでに言うと、ちょっと嬉しそうでもあった。


 だから、本当はあのとき気づいてたんだ。

 月見里が好きなのが誰なのか。


 でも、相手があの陰キャの渡瀬だっていうのが無性に気に食わなかった。

 陰キャだからって、別に下に見てるつもりはなかったけど……。

 でも、オレよりあいつが良いと思わせるようなものが見当たらなくて……どうしてあいつなんだよって思いが強くて……。


 だからつい勝負しようって言いだしてしまった。


 半分は、オレよりも月見里に思われてる渡瀬を叩きのめしたかったから。

 もう半分は、もし渡瀬が勝てたら、認められるかもしれないと思ったから。


 結果はオレの負け。

 まさか渡瀬があれだけ出来るとは思わなかった。