「ひ、ひひひひろ、くんっ⁉」

 ちゃんと言えてないあたしの顔をそのまま自分の胸に押し当てた陽呂くんは、誰に向かってなのか分からないけれどいつもより大きい声で宣言する。


「ってわけで美夜は俺の彼女なんで、手ぇ出すなよ?」


 明らかな牽制(けんせい)の言葉に周囲の沸き上がり方がハンパない。


「ッキャー‼ キス? 今キスしたよね⁉」

「うわー、生で見るの初めて」

「おい! 陰ヒロ手ぇ出すの早すぎだろ⁉」

「しかもなんだよあの牽制」

「でもあの顔で言われたら様になるわー」


 それらの言葉を聞きながらあたしはもう立っているのがやっと。

 絶対変な顔してるから陽呂くんが隠してくれて助かった。

 ……いや、こうなってるのは陽呂くんのせいなんだけれど……。


 告白されて、ちゃんと陽呂くんの彼女だって言われて嬉しかったけれど、みんなの前でキスされたことだけはとにかく恥ずかしすぎて死ぬ!

 これは、後でしっかり文句言わせてもらわないと!


 あまりの騒ぎに先生たちが怒鳴りながら落ち着かせる中、あたしは陽呂くんの腕の中でそう決意していた。