陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

「なんだよ、お前らちゃんと見てなかったんじゃねぇの? どこにズルする余地があったっての?」

「そうだよ! 確かに授業ではほとんど運動してるとこ見ないけどさぁ、実はそれなりに出来るやつだったってことじゃねぇの⁉︎」

「それに特訓だってしたみたいだし! 好きな女取られまいと頑張ってたみたいじゃん⁉︎」


 クラスメートだけでも陽呂くんの味方になってくれたのはあたしも嬉しかった。

 でもそこであたしを引き合いに出さないで欲しい‼︎


 何人かの注目があたしの反応をうかがっている様に思えた。


 どうしよう、と思っていると騒ぎを聞きつけてそれぞれの担任の先生がやってくる。

「お前らどうした⁉︎」

「何を騒いでいるの? 試合は終わったんでしょう?」


 先生の登場で少しは落ち着いたものの、説明しながらまたヒートアップしてきていた。

「だっておかしいだろ? 颯に勝てるほどなんて」

「じゃあどうやってズルしたっていうんだよ? そんな様子なかっただろ⁉︎」

 と、さっきと同じような文句が行き交う。


 そこに、第三者が現れた。


「私が渡瀬くんを特訓したんですよ」

 騒がしい中でもよく通る声はみんなに聞こえたみたいだった。