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「あ! 月見里さんここにいたの? 主役なんだから前に来なくっちゃ!」

「え? いや、あたしはここで――」

「良いから良いから」

 端の方でひっそり見ていたのに、クラスメートに見つかって前に押し出されてしまった。


 ひー! 目立ちたくなかったのにー!


 心の中では悲鳴を上げていたけれど、結局一番前、しかも丁度中央のところに待機させられてしまう。

 しかも人込みを押されてきたせいで花穂とも離れてしまった。


 心細い……というか、恥ずかしい!


 二人が女を賭けて勝負するという噂は出回っていても、その女が誰なのかまではそこまで広がっていなかったのに。

 こんなところに座ったら誰が見ても分かるじゃない‼︎


 ここまで連れてきたクラスメートを恨みながら少し涙目になった。


「月見里? 応援に出て来てくれたのか?」

 そんなあたしに気づいた颯くんがそう言って近づいて来る。

「え? いや、そういうわけじゃ……」

 ハッキリ違うと言えれば良かったんだろうけど、満面の笑みで来られたから言いづらい。
 物凄く言いづらい。


 そこに陽呂くんが無言で近づいて来る。

 何となく圧を感じるのは気のせい……じゃないよね。

 明らかに颯くんを睨んでるもん。