陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

「ごめん陰ヒロ、ちょっといい? そんなに時間取らせないから」

 正直、用事があると言って断りたかった。


 でも、宮根は美夜と一番仲の良い友達だし……。

 それにいつになく真剣な様子だった。


 だから仕方なく、「少しだけなら」と頷いた。


 ついて行った先は、生徒玄関からさほど離れていない階段下。

 人通りはあるけれど、あまり気にも留められない場所。


「んーと、まず、陰ヒロと美夜って両思いなんでしょ?」

「っ⁉︎」

 いきなりのド直球に言葉が詰まる。

 だいたい美夜にさえまだ気持ちを伝えていないのに、それを他のやつに言うとかあり得ないだろ。


「あ、別に答えなくて良いよ。ただの確認だから」

「……」

「それにそこんところは本人同士の問題だし、美夜が良いって言うならあたしは何も言うつもりないし」

 そんな話を聞いて、多分美夜はこいつには色々伝えてるんだなって思った。


 嫉妬に似た感情もあるけど、こいつのおかげで美夜が笑顔でいられる部分もあると思うから……。

 だから、良かったって思う。


 ちゃんと相談したり助けてくれる友達みたいだから。

 でも、だからこそ俺には容赦が無かったらしい。