陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

「じゃあオレと来るか? 前哨戦でもするか?」

 そのまま行こうと思っていたら、成田が面倒な事を言い出した。


 前哨戦って何だよ。

 本番だけで充分だろ?


 あからさまにうんざりした顔をしたけど、元々顔を隠すような状態にしているせいか気づいてはもらえなかった。

「お前がどれだけ出来るのか見せてもらおうじゃないか」

 成田はやる気満々で、返事もしていないのに連れて行こうとする。


 はぁ……マジこういう奴苦手なんだけど。


 話したくもないけど、流石に何も言わないままじゃあ強引にでも連れて行かれそうだ。


「悪いけど、俺用事あるから」

「ん? なんだ、そうなのか。そういうことは早く言えよ」


 でもまあ、ちゃんと断りさえすればアッサリ引いてくれるからまだマシか。

 一番面倒なのはこっちの事情も気にせず「ちょっとくらい」とか言い出すような奴だから。


 すぐに引いてくれた成田は「じゃあ本番でな」と言い残して友達と先に行ってしまった。

 一緒になるのも嫌だったから少しそのまま見送って、姿が見えなくなってから俺も生徒玄関へと向かう。


 そうして靴を履き替えているとき。


「ああ、良かった。まだいた」

 そう言ってさっきまで美夜と教室にいたはずの宮根が俺の方へ向かってきた。