ヤバかった……。

 あれは、反則だろ……。


 吸血した後、いつものようにすぐ熱を逃がしてやれば良かったのかもしれない。

 でも、美夜が月原さんに咬みつかれなくて良かったとか、奪われなくて良かったとか。

 安心したと同時に、それを怖がっていたことに気付いた。


 気づいてしまったから、もっと安心が欲しくて首筋にキスを落とす。

 吸血するわけでもないのに、ちぅっと吸い付いて。

 そして、頭の片隅でまた怒られるかもしれないと思いながら鎖骨に印を残した。


 美夜は俺のもの。

 誰にも渡したくないから、独占欲の証をつける。


「ひろ、くん……」

 でも、美夜の口から聞こえてきた声は俺を非難するようなものじゃなくて……。

 むしろ、甘ったるい(つや)を含んでいる様に聞こえた。


 背中にあった手が前に来たので、どうしたのかと顔をあげて見ると……。


「陽呂くん……」

 潤んだ目に、上気した頬。
 唇は食らいつきたいほど艶めいていて……。


 めちゃくちゃ可愛かった。


 しかもそんな美夜が自分から俺を求めるようにキスをしてきた。

 初めての美夜からのキスに、驚きと言葉では表しきれない喜びが沸き上がる。