その行為は、いつもの熱を落ち着かせるキスと違ってむしろ昂らせていく様で……。

「っ、ひろ、くん……だめ……」

「ん……」

 ん、じゃなくてー!


 これ以上はダメだとあたしの中の何かが訴えてくる。

 でも、静止の声は陽呂くんに届いているのかどうか……。


 首筋に触れていた唇は、鎖骨の方へと下りていく。

 チリッと小さな痛みに、また印を付けられたのだと気づいた。


 二度目の印。

 でも今度は、困るという気持ち以上に、喜びが湧き上がった。


 あたしは、陽呂くんのもの。

 その印。

 そんな印を付けたいと思うほど求められる事が嬉しかった。


 そう思ったら、さっきまでダメだと訴えていた何かがフッと消える。

 そして、沸騰している様なアタマは陽呂くんだけを求めた。


「あっ……ひろ、くん……」

 彼の背中のシャツを握っていた手を離し、その手を彼の胸元に移動させる。


「美夜?」

「陽呂くん……」

 胸元から顔を上げ、あたしを見下ろす茶色の目。

 その目にあたしの顔が映っている。

 あたしだけが映っている。


 それがまた嬉しくて、あたしは陽呂くんの顔に近づく。

 目を閉じて、彼の唇に触れた。