陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

「心配しなくても、少し私の血を入れただけだよ」

「は?」

 思わぬ言葉に動きも止まってしまう。


 血を入れた?

 輸血みたいなもの?

 でも、陽呂くんは動けないみたいだしいい状態ではないことは確かで……。


「それでどうしてあんな風になるんですか⁉ 陽呂くん辛そうじゃないですか!」

「苦しみとかはないはずだよ? ただ動けないだけだ」

「動けないだけって……」

 それが本当でも、心配なことに変わりはない。


「吸血鬼に吸血鬼の血を入れた場合、他人の血を自分のものに変えるためにすべての力をそれに費やすんだ。そのため動くことも出来なくなる」

 月原先生は簡単に説明してくれるけれど、正直そんなことどうだっていい。

 肝心なのは陽呂くんが大丈夫なのかどうかだ。


「そんなことして、陽呂くんは大丈夫なんですか⁉」

 ドクドクと、嫌な感じに鼓動が早まる。


「少量しか入れていないし、大丈夫だよ」

 それより、と月原先生の目が妖しく光る。

 その目と視線が合ったと思ったら、あたしは金縛りにでもあったかのように動けなくなってしまった。


 これ、マズイ状況だよね⁉


 そう思っても、動く事が出来なくてどうしようもない。

「っ美夜!」

 陽呂くんが焦った様にあたしの名を呼ぶ。