陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

「っと、無理しない方がいい。君はケンカなんてしたことないだろう?」

 でも、陽呂くんの拳は難なく止められて余裕そうな月原先生に諭される。

 それでも陽呂くんは止まらない。


「っ美夜には、手を出すな!」

 次は蹴りを入れようとするけれど、それもガードされる。

 しかも月原先生の表情を見るに、まったく(こた)えていなさそうだった。


「まったく……でもやっぱり“唯一”は、君にそこまでさせる相手なんだね?」

「っ! 美夜は、渡さない……!」

 陽呂くんは必死に月原先生に食って掛かっているけれど、まるで相手になっていなかった。


 あたしはハラハラと二人の様子を見ることしか出来ない。

 月原先生と陽呂くん。

 吸血鬼として生きた月日がまるで違うせいか、その力の差は埋められないみたいだった。


 でも、月原先生はなんだかんだ言っても“先生”だし、そこまで酷い事はしないと思ってた。

 あたしの血を吸わせてというのも、何か確認したいということだったし。

 陽呂くん以外の人に咬みつかれるのは嫌だけど……。


 だから、次の瞬間月原先生がした事が信じられなかった。


「まったく……ちょっとは大人しくしててほしいな」

 呆れたようにつぶやいた月原先生は、また殴りかかろうとした陽呂くんの腕を掴んで引き寄せる。