陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

 少し見えた彼女達の表情はポーッとしているようで、何だか意識がはっきりしている様には見えない。


「今日のことは見なかったことにします。あなた達も忘れて、もう月見里さんには手を出さない様に」

「はい……分かりました……」

 ポーッとした状態で頷いた彼女達は、そのまま操り人形のようにフラフラと小ホールを出ていった。


 え? 何? どうしたの?


 あたしは疑問だらけだったけれど、陽呂くんは何か気づいたようだ。

「……催眠術か」

 呟きが聞こえたと思ったら、月原先生が話しながら近づいて来る。


「ああいう面倒な子達には催眠術で従わせるのが手っ取り早いよ。渡瀬くんはまだやったことが無いのかな?」

 本当に催眠術らしい。

 確かに安藤さんから吸血鬼は催眠術を使って人を操ることが出来ると聞いていたけれど……。


 陽呂くんがやったところを見たことが無いし、吸血鬼の催眠術なんて今初めて見た。

 本当に目を合わせただけで出来るんだ……。

 なんて、感心とはまた違うけれど軽く驚く。


「……別に、今まで必要性を感じなかったので」

 月原先生を警戒しながら答えた陽呂くんは、彼からあたしを隠すように立ち位置を変えた。