陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

 近づいてきた月原先生にまとわりつく女子達。

 その様子を見て助かったのかな? と肩の力を抜いた。


 でも月原先生が彼女達の言葉を丸っと信じたら、痛い思いはしなくても理不尽な思いはしそうだなと思う。

 だからと言って彼女達のように懸命にうったえる気力も無くて、ただ成り行きを見守った。


 月原先生は陽呂くんを吸血鬼にした人物で、何を考えているのかも良く分からなかったし。

 それに近づかないって陽呂くんと約束したし。


 陽呂くんも今度こそあたしの前に出て警戒をあらわにしていた。

 そんな陽呂くんと彼らを見ていると……。


「そうですか。……でもね、私は貴女が手を上げようとしているところはハッキリ見ているのですが?」

「え……?」

 笑顔で言ってのけた月原先生の言葉に空気が一変した。

 彼女達の戸惑いと焦りがこっちまで伝わってくるような気がする。


「あ、その……」

 何とか言い訳を絞り出そうとしているのか声を出す女子生徒に、月原先生は変わらぬ笑顔で彼女達を見据えていた。


「……いいですか? そういうことは敵を作るだけですからしてはいけませんよ?」

「は、い……」

 月原先生の(まと)う空気が少し変わったと思ったら、何だか女子生徒たちの様子もおかしくなったように見える。