陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

 どうにでもなれとは思ったけれど、怖いものは怖い。

 でも、負けたくないって思いだけで弱気な態度は見せなかった。


「美夜、俺は良いから」

 陽呂くんはそう言ってまた前に出ようとしてくれたけど、あたしはそれを止める。

 だって、彼女達のケンカを買ったのはあたしだから。

 少しでも、あたしの怒りが彼女達に伝わってほしいとまだ思っているから。


 だから、怖くても睨みつけた。


「マジうっざ。そんな目出来ない様にしてやるよ」

 その顔から笑みまで消して、彼女達も本気で怒ったのが分かる。


 そして手が振り上げられたとき――。


「何をしているんだい?」

 少し離れた場所から、あたしたち以外の声がした。


 離れているのにすぐ近くで発せられたかのように通った声。

 見ると、あたし達以外誰もいなくなった小ホールの入り口の辺りに月原先生がいた。


「っ!」

 教育実習生とはいえ先生である人の登場に三年の彼女達は少し怯んだ。

 でも、ギリギリ暴力まで至っていなかったからか開き直る。


「先生ー! あたし達あの子に酷いこと言われたんです!」

「あたし達ちょっと注意しただけだったのに……」

 月原先生がイケメンだからっていうのもあるんだろうか。

 彼女達は甘えるように月原先生に泣きついていた。