陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

 あたし達は球技大会練習のために開放されている小ホールに一式を持っていき、比較的開いてるところに卓球台を設置して早速練習してみる。

「とりあえず力抑えた状態でやってみよう?」

 あたしがそう提案して、陽呂くんが頷く。

 そうして始めた試合は案外普通に出来ていた。


 力を抑えた状態でもそれなりに出来ていて良かったと思うけれど、今のままだとあたしでも勝てそうってくらいの力量。

 元とはいえエースだった颯くんには勝てないよね。


「じゃあ次は……半分くらい本気で」

「ん、分かった」

 一瞬全力でと言いそうになったけれど、ちょっと怖い気もしたから半分と言ってみた。

 でもそれで正解だったらしい。


 バァン! コンッココンッ


 なんて、卓球ではありえない音を立ててピンポン玉が落ちる。

 一度バウンドした玉は、その時点で球体の形を無くしていた。


「……」
「……」

 二人でジッとその球を見る。
 そして顔を見合わせ――。

「ヤバイね」
「ヤバイな」

 もはやヤバイしか出てこない。


「ああ、でもこのままじゃだめだね。少しづつ抑えていってみよう?」

 気を取り直して丁度いい力加減を探り、何とか玉がつぶれないようにラリーが出来るようになったころには小ホールの使用時間が迫っていた。