陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

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 放課後、卓球の練習をしないかと陽呂くんに聞いてみたんだけれど。

「あー、そうだな。やってみるか」

 そんな軽い了承の返事に少し不安になる。


 あたしが提案しなかったら、練習全くしないで本番やるつもりだったんじゃあ……。


 体育の授業でも陽呂くんはほとんど練習している様子がない。

 卓球台がみんなにいきわたらないのをいいことに、いつも体育館の端っこで休んでいるのを見かける。

 ちゃんと交代して使えと先生に怒られたときだけ少し打つ程度。


 あれだけでちゃんと試合が出来るようになっているのかはなはだ疑問。


 だと言うのに陽呂くんは全く危機感がなさそうで……。

 それが自信の表れならまだいいけど……でも思った通り違ってた。


「声かけてくれて助かった。練習したくてもなかなか言い出せなくて……。授業中じゃあ本気出せないし」

「陽呂くん……」

 そういうことはもっと早く言って。


 流石に今回はちょっと呆れた。



 球技大会前の今の時期は、申請さえすれば誰でも道具を借りられる。

 とは言え部活も普通にあるので、卓球部が体育館を使う日なんかは無理。

 でも今日体育館を使うのはバスケ部だったみたいで、卓球台やラケットなどは自由に使える状態だった。