陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

 あの頃はとにかく混乱して、この熱をどう処理すればいいのかも分からなくて、目の前の陽呂くんに(すが)り付いてしまった。

 でもあの頃は陽呂くんも戸惑ってたなぁ、なんて。ぼんやりしてきた頭で考える。


 無意識のうちにあたしは陽呂くんの胸元のパーカーを掴む。

 混乱はしないけれど、縋りつきたい気持ちにはどうしてもなっちゃうから。


 あたしがギュッと掴むと、背中の陽呂くんの手に力が込められた気がした。



 ちぅ、と吸われてあたしは「んっ」と漏れ出そうなはしたない声を抑える。

 ただでさえ恥ずかしいのに、声を出すのはもっと恥ずかしい。


 なのに陽呂くんは――。

「声、抑えんなよ。いつも聞かせてって言ってるだろ?」

 そう囁いて今度はじゅくりと吸った。

 「ふあぁ」と、今度は声が抑えられない。

 恥ずかしくて抑えたいのに、喉に力が入らなくなる。


「美夜……可愛い。もっと聞かせて」

「あっ陽呂くぅん……」

「名前も、もっと呼んで……」

 熱い吐息をあたしの首にかけながら、陽呂くんは甘くねだってくる。


「名前、嫌いだけど……美夜に呼ばれるのは好きだから……」

 彼はそう言って、首筋から溢れるものを()め取った。