ここに引っ越して来て、初めの頃に美夜に言われた言葉。



 ボッチで陰キャな俺が死んだって両親以外は悲しまないだろう。

 なんて思うのに、いざその死が目の前に来たら生きたいと願ってしまった。

 その代償がどんなものかも知らずに、生きたいと願う思いだけで頷いてしまった。


 美夜がそばにいる今は後悔なんて微塵もしていないけど、直後は流石にショックだったんだ。

 だって、まさか吸血鬼になって人の血を飲まないとならなくなるなんて思いもしないだろ?


 不幸中の幸いは、血を飲む以外は今までとほとんど変わりないってところかな。

 でも両親も結構気にして、今まで住んでいた場所には居られないなんて言い出して引っ越す事になったし。


 まあ、結果的に美夜に会えたことで俺も両親も救われたけど。


 引っ越しの挨拶に行ったときに初めて会った美夜。

 初めから可愛いな、とは思ってた。

 でも、それだけ。


 そんな可愛い普通の子が、俺の事気に入ったりするわけないし。

 だから登下校が一緒になる事があっても俺からそんなに話すことは無かった。


 大体が美夜が話して、俺はそれに答えるだけ。

 そんな会話の一つだった。