そんなあたしを愛でるように、陽呂くんの手が髪を優しく撫でる。

 その心地よさに目を閉じていると、ポツリと陽呂くんが言葉を零した。


「美夜は、月みたいだな」

「え?」

「静かな夜に、優しい明るさを与えてくれる月みたいだ」

「そ、そうかな?」

 まるで神聖なものを語るかの様に言われて、照れてしまう。


「そうだよ。すべてを受け入れて、その明るさで包んでくれてるような……美夜は、俺にとってそういう女」

 だから俺は……と続けた陽呂くんは、それ以上を言葉にしなかった。

 でも、言われなくても何となく分かる。


 だから、そんなあたしだから……好きなんだって。


 言われなくても分かったから、あたしはその幸せを逃がさない様に陽呂くんの背中に腕を回して彼を抱きしめた。

 応えるように、陽呂くんの腕にも力が込められる。


 そんな風に抱き合って幸せに浸ってるうちに、結構時間が経っていたのか一階から呼び声が聞こえた。

「美夜ちゃーん! お母さんが迎えに来たわよー?」

 残念ながら時間切れ。


 名残惜しかったけれど、あたし達は離れて「また明日」と別れた。