でも、だからこそちゃんとした関係になりたい。

 あやふやなままじゃなくて、心置きなく陽呂くんの彼女として、陽呂くんを感じていたい。


「っは……ひ、ろ……くん」

「ん?」


 だから、甘く聞き返す声にちゃんと告げる。


「陽呂くん……あたしの気持ち、聞いてくれる?」

「……だめ」


 でも、陽呂くんは短くそう言うと顔も見えないくらいギュッとあたしを抱きしめた。


「でも、あたし言いたい」

「ごめん、それでもだめ。……それだけは、俺の方から言いたい」


 不満も、陽呂くんのその言葉だけで消えてしまいそうになる。

 言葉にはしていない。

 でも、言っているのと同じ意味の言葉だったから……。


 ……それでも、肝心の言葉はなかった。


「……今は言ってくれないの?」

「……ん。……ごめん、でも全部ちゃんとしたい。月原さんからも成田からも美夜を守って、それから心置きない気持ちで美夜に伝えたい」

 だからごめん、と重ねて謝られた。


 あたしはフゥーと息を吐いて、しかたないなぁと苦笑する。

 頭を陽呂くんの胸に預けて、「分かったよ」と伝えた。


「陽呂くんがそうしたいなら、ちゃんと待ってる。……でも、その代わりちゃんと守ってね?」

「ん。絶対守るよ」

 そこだけはためらわずにハッキリ言ってくれたから、あたしは安心して陽呂くんの胸に額をこすりつけた。