陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

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 家には帰らず陽呂くんと一緒に彼の家にお邪魔すると、おばさんがいつもの陽だまりのような笑顔で出迎えてくれた。

「美夜ちゃん、いらっしゃい。お母さんから聞いてるわ。何ならお母さんが帰ってくるまでうちにいても良いからね」

 迷惑そうな様子なんて欠片もなく、むしろ嬉しそうに受け入れてくれる。

 だからあたしはせめてもと手伝いを申し出た。


「気にしなくていいのに……。でも、お願いしようかしら? 私も美夜ちゃんとお話したいし」

 ホンワカニコニコした様子に、あたしもホンワカニコニコになっておばさんの手伝いを始めた。


「そう言えばあの月原さんが学校に来たんですって? 美夜ちゃん何もされてない?」

 サラダにするための葉物を洗っているとそんなことを聞かれた。

「え? はい、とくには何も……」

 月原先生とはまともに会ったのは昨日の帰りだけで、今日は会話すらしていない。

 こっちはこっちで大変だったし、月原先生はほぼ常に生徒に囲まれていたし。


 近づかない様にする以前に近づけるとは思えなかった。


 それにしても、陽呂くんもだったけれどおばさんも月原先生を警戒している様に見える。

 一応息子の命の恩人なのに……。