陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

 そして、その熱を受け入れてるあたし。

 そんなあたしの気持ちも、当然陽呂くんに伝わってるよね……?


 でも、やっぱり言葉がないと……。

 じゃないと、関係は変えられない。

 ずっとあやふやなまま。


 だから、やっぱり言葉は必要。


「美夜?」

 袖を掴んで無言で見上げるあたしに、陽呂くんはもう一度呼び掛ける。

 どうした? と、不思議そうに聞いて来る茶色の目。


 ああ、好きだなって、前触れもなく思う。


 花穂や椎菜さんに告白しろって言われたからじゃないけれど……あたしのこの想いを伝えたいなって思った。

「あのね、陽呂くん……あたし、陽呂くんのことがす――」

「っ!」

 ピロロロロン
 ピロロロロン

「……」

 タイミング悪く鳴り響いたのはあたしのスマホ。

 もう!
 何でこんな時に!?

 電話が鳴っているのに続きを言うわけにもいかず、あたしは「……ごめん」と断りを入れてスマホ画面を確認した。


 表示されている名前はお母さん。
 大事な用事の可能性もあるから出ないわけにもいかない。


「……お母さん? どうしたの?」

『ああ、美夜。今日は帰れる予定だったけど、急遽おばあちゃんを病院に連れて行かなきゃなくなって……悪いんだけど夕飯広瀬さんのお宅で頂いて来てくれる?』