「……でも、やっぱり悔しい」

 しかも、連日行くとか……。

 まるであたしの方がより紅夜に会いたいと思っているみたいで……。


 いや、会いたいよ?
 好きな人だもん。

 出来るなら毎日会いたいよ?


 でも、こうやって仕組まれると……。

 ギュッと眉間のシワが深くなる。


 会いたい。
 でも悔しい。

 そんな気持ちを天秤にかけ、あたしは黎華街の入り口を見つめて揺れ動いていた。


 しばらくそうしていると、近くに黒塗りの高級車が停まる。

 何となくそのまま見ていると、中からスーツ姿の男性が降りて来た。
 歳はお父さんと同じくらいか、もう少し上かって所。

 でも確実にこの人の方がダンディで格好良かった。


 その人は、車から降りるとタバコを吸い始める。
 煙をくゆらせながら、彼も黎華街の入り口を見つめていた。

 その目に映る感情は読み取れない。

 この人は何を思ってあの街を見ているんだろう。


 何故か気が引かれてジッと見ていると、彼がこちらを見た。

 目が合って、ビックリしたあたしはその場を後にする。


 やっぱり今日はやめておこう。

 少しは間を空けた方が良い気がするし。