朝、日葵から聞かされた話をあたしは悶々と考えていた。


 一週間以内、ですって?


 日葵とのやり取りをあたしに黙っていた紅夜。

 つまり彼は、賭けを提案しておきながら負けるつもりなんて最初からなかったんだ。

 しかもひと月と言っていたのに、それより前に一週間という期限を付けて日葵に交換するものを渡しておいてたとか……。


 紅夜が何を思ってそんな事をしたのかは詳しくは分からない。

 でも、絶対にあたしを来させようって意図だけは物凄く感じる。


 ヘアクリップは大事だし、取り戻せるなら取り戻したい。

 それに、その事がなくても多分ひと月以内には紅夜のもとへ行っていたと思うから……。



 でも。

「何か、悔しい」

 眉を寄せてひとりごちる。


 別にあたしは負けず嫌いというわけでもない。

 でも、こんなふうに何もかも紅夜の思い通りに事が運ぶように仕組まれると……。


 思い通りに動かされているのが、ちょっと悔しい。


 なんて思っているくせに、あたしは前に垂らすように結った髪に今朝彼から貰ったリボンを付けていた。

 そして日葵から受け取ったシルバーリングを握りしめて、黎華街の入り口近くまで来ている。