吐息さえも食べつくしてしまうようなキスは乱暴なのに、どこか甘い。

 息がしづらくて苦しい。

 でも、苦しい分身体の熱は高まっていく。


「っはあっこう、や……」

 身体の奥。

 身体の中心が熱を持ち、自分でも信じられない甘い声が出た。


「ん? どうした?」

 唇が離れて、そう聞いてくる。

「苦しいよ……」

「そう?」

 言葉はとぼけているけれど。
 優しげな微笑みを浮かべているけれど。

 その目は獰猛な狼のまま。

 分かっていて、苦しくなるようにキスしていたんだ。


「……いじわる」

「なんのことかな?」

 あくまでとぼける紅夜は、プチプチとシャツのボタンを外していく。


「あっ……」

 (あら)わになっていく肌が羞恥(しゅうち)でほんのりピンク色に染まっている。

 胸元だけをはだけた状態にした紅夜は、ふくらみに手を添えて鎖骨に唇を落とした。


「っ!」

 恥ずかしさとほんの少しの恐怖。

 でもそのわずかな恐怖も温かい手の熱が溶かしていく。


「こう、やぁ……」

「何?」

 知らず切なげな声が出て、返事をした紅夜の吐息が鎖骨をなぞる。