すでに一分は過ぎてる。

 ためらっている時間はなかった。


 両手を紅夜の頬に添えると、口移ししやすいようにかかがんでくれる。

 栄養ドリンクにも似た味の――でも変わった風味のする液体。

 それを一滴もこぼさないように、紅夜へとうつした。


 紅夜はそれを飲み込むと、そのまま舌を絡めてくる。

 深くなるキス。

 状況を思うと、恥ずかしいよりもただただ泣きたくなった。


「うぁっ、ふぅ……」

 でも、また涙が零れてしまう前にKの声がかかる。


「時間だ。さあ、ロート・ブルーメのもとへ案内してもらおうか?」

 そうして強引に離されるあたしと紅夜。

 紅夜はそのままKと数人の男達と共にまたエレベーターへ乗り込んだ。


 あたしは大柄な男ともう一人の男、二人の男達と共に残される。

 紅夜の姿が消えたエレベーターの扉を見つめながら、頭の奥がズキズキと痛んでくるのを感じた。


「さてと、じゃあ待っている間にお楽しみと行こうか?」

「……え?」

 振り返り、男達が下卑(げび)た笑みを浮かべているのを見て悪寒が走る。

 そうだ。

 彼らはあたしを解放するとは言っていない。

 むしろこのまま実験に使うとか言っていたくらいだ。

 逃がしてくれるわけがなかった。