あたしはとっさの判断で日葵を守るようにその手から逃げた。

 あたしは肩を掴まれてしまったけれど、日葵は捕まらずに済む。


 と言ってもこのままだと時間の問題。

 だからあたしはすぐに交渉のための言葉を放った。


「必要なのはあたしなんでしょう? この子は逃がして!」

「ああん?」

 すごまれるけれど、怯むわけにはいかない。

 あたしは紅夜の姿を思い浮かべて、心を強く持った。


 泣きそうになる寸前だけれど、無理やり恐怖を押し込める。

「ここは黎華街じゃないわ。警察だって来る。こんな朝から目立ってたら、あなた達なんてすぐ捕まっちゃうんだから」

「はぁん? だからさっさと済まそうとしてんだよ」

 そうしてまた男達の手が伸びてくる。


「ぃやっ!」

 日葵も逃げようとするけれど、この人数に囲まれると逃げ場がない。

 肩を掴まれてしまったあたしも今度は助けられない。


 案の定、日葵はすぐに腕を掴まれてしまった。


 ダメだ。

 もっと他にこいつらを脅せる材料がないと!


 考えても出て来なくて、あたしは必死に身を(よじ)ったりして抵抗する。

 今はそれ以外に出来ることが無い。


「っこの! おとなしくしやがれ!」

 あたしの肩を掴んでいた大柄な男が、しびれを切らして拳を振り上げる。

 痛みを覚悟した次の瞬間、また別の声が掛けられた。