「っあ!」

 肩を掴まれて、乱暴に床に叩きつけられる。

 後頭部はかろうじて守ったけれど、背中は(したた)かに打ち付けた。

「うっくぅう……」

 痛みに顔が歪む。


「美桜!?」

 日葵の心配そうな叫びが聞こえる。


 いいから、走って逃げて!


 そう叫びたいけれど、痛みに耐えていたあたしは声を出すどころか目も開けられない。

 やっと目を開けられたときには、あたしは男に完全に組み敷かれていた。


「っとにふざけたことばかりしてくれやがって!」

 男の手が思い切り振り上げられる。


 かなりの衝撃が来ることを予測して、あたしはまた目をギュッと閉じた。



「……」

 でも、衝撃はなかなか来ない。


 恐る恐る目を開くと、男を通り越した先に黄金が見えた。

 一体どこから現れたんだろう。

 誰かが近付く音は聞こえなかったと思うのに。



 ライトの光を反射してキラキラ輝く髪が、その人の整った顔を引き立てていた。

 肌は白く、線の細い印象。

 そして寒々しく思えるほどの、青い瞳。


 両耳の赤いピアスが、白い肌にとても良く映えていた。