立ち上がったあたし達は、もう一人の大柄な男が行動を起こす前に彼等から距離を取る。

「日葵、こっち!」

 日葵の涙で濡れた顔は、恐怖や戸惑い、色んな感情で歪んでいた。

 それでも生きるために、逃げるために必死にあたしについて来る。



 日葵をかばうような立ち位置になり、周囲の状況を確認した。


 日葵を拘束していた男は起き上がってはいたけれど、よほどイイ所に入ったのかすぐには動けそうにない。

 大柄な男は不愛想な顔に僅かな苛立ちを表しながらも、こちらの様子を見ている。

 あたしを拘束していた男は、あたしの行動が予想外だったのか今の今までフリーズしていたようだ。


「ってめぇ!? ふざけたことしてんじゃねぇぞ!?」

 状況を把握した彼はそう怒鳴りあたし達に近付いてくる。


 あたしは後退りしながら逃げ道を探した。


 確実なのは今近付いて来ている男の方にある入り口。

 今ならこの男一人をかわせばここから逃げ出せる確率は上がる。


「日葵、あたしが合図したら入り口の方に向かって走って」

「え?」

 日葵だけに聞こえるように、声を潜めて伝える。


「お願い、言うとおりにして」

「わ、分かった」