「この花は繊細だって言っただろ? 温度や湿度、気圧の変化だけでもすぐに枯れてしまう。しかも太陽光だと焼けてしまって地上では育てられない」

「あ、だから地下に……」


「それでも紫外線は必要だから、そっちの量も調節したりして……俺は感覚で分かるけど、他の人じゃあ無理だろうな」

「感覚って、アバウトな……」


 少し呆れたけれど、実際そういうのは感覚でやるしか無いんだろう。

 多分、単純な数値では表せられないものだろうから。


「でもそっか。紅夜にしか出来ないことなんだね……」

 これが紅夜の秘密。

 多分、秘密の全てではないけれど一番大事なもの。

 それを教えてくれたことに嬉しさが湧き上がる。


 でも、やっぱり疑問はまだあって……。


「じゃあ、この街の本質ってどう言う意味? 薬の原料になる花をこの街の地下で育てているのが本質?」

「……まあ、そんなトコ」


 あ、違うんだな。

 すぐにそう思った。

 少なくとも、もっと複雑な理由がありそうだ。


 でも教えてはくれないんだろう。

 教えてくれるならここで肯定はしない。


「……いいよ? 話したくないなら話さなくても」

「……」

「いずれ教えてくれるなら、今は無理には聞かないから」

 下から紅夜の顔を覗き込むようにして笑顔を向ける。