紅夜は数回瞬きした目を細めて笑う。

「何? 毎日来てくれんの?」

「え? いや、その。流石に毎日は無理……」

 会えるなら会いたいけれど、現実的な問題として毎日は無理だ。


 学校だってあるし、そうなるとほんの少ししか会っていられない。

 万が一ここに泊まることが出来ても、それはそれでお母さんへの言い訳がしづらくなる。


「だよな。……だから、来週な」

「……うん、約束」

「じゃあ、約束の証として美桜のヘアクリップは返さないから」

 話の流れを利用して、サラリと言われた。


「……え?」

「俺のシルバーリングも預けたままにするし、いいだろ?」

「え? いや、いいだろって……」

 一応あたしが紅夜のところに来たのはそのヘアクリップを返してもらうためでもあったはず。

 それなのに返してもらわずに帰るなんて……。


 日葵に聞かれたらなんて答えれば……。


 一週間経ってもこのシルバーリングを持っていたら、絶対に行かなかったんだねって聞かれちゃうだろうし……。


 なんて困っていたけれど、紅夜は返してくれる気は全くない様だ。


 これは……日葵には言い訳を考えるか、正直に話すかしないとならないかもしれない。

 そんな覚悟を決めながら、あたしは朝食を終えたのだった。