「リボンもちゃんとつけてるな」

 あたしの動揺なんてお構いなしに身だしなみをチェックされる。

 髪に触れた手が、リボンの花の位置を直すように少し触れた。

 そして次にあたしの右手に目を留める。


 あ、そうだ。


「ごめんね、これ返さなきゃ」

 大事なものなんでしょう? と言って右手の薬指にはめたシルバーリングを外そうとする。

 シャワーのときも外していたんだけれど、上がってからも同じ場所にあったからまた無くさないようにとつけていた。


 でも、それは手を重ねて止められる。


「いい。そのままつけてろ」

「え? でも……」

「良いんだよ。お前が俺のものつけてると俺のって印みたいで、気分が良いから」

 独占欲をサラリと口にされ、一瞬言葉が出てこなかった。


 でも、印なら……。


「紅夜の女って印なら、このリボンがあるでしょう?」

「でも、リボンはこの街でしか付けないだろう? 街の外でも身に付けられるものもあったって良いだろ」

 憮然と言われて、フフッと笑ってしまう。


「でも学校では校則違反になっちゃうよ」

 何気なく、普通の事を言ったつもりだった。

 でも紅夜は予想外のことを言われたとばかりに戸惑いを見せる。