その手がすぐに首元のリボンを外しにかかるけれど、あたしはもう抵抗する意思を失っていた。

 熱を(はら)んだ紅夜の目を見つめ返すことしか出来ない。


 普段は感情の読み取れない冷たい目をしているのに、そこに熱がこもったときだけは焦がされそうなほどの感情が読み取れる。

 赤い炎が揺らめいていそうな、その綺麗な瞳から目が離せない。


 制服のリボンを外し、ブラウスのボタンも外しながら紅夜は口を開く。


「……確かに俺は色々仕込んだけど、最終的に選んだのはお前だよ、美桜」

「っ!」

 その通りだった。


 自分の女である証を先に渡していたり、シルバーリングとヘアクリップの交換を指示したり。

 色々仕組まれたことはある。


 でも、それでもこの街に来るかどうかを選ぶのはあたし自身だった。

 最後の選択肢は、あたしに(ゆだ)ねられていた。


「選んで、決めたのはお前。そうしてまた俺の元に来たからには……」

 シュルリと、髪を結んでいたリボンを解かれる。

 そのリボンについている花のモチーフに、紅夜は口づけた。


「もう、手放してやらない」

 彼の瞳の炎がひときわ明るく揺らめき、狼へと変貌(へんぼう)する。