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ヒロミの後を追って部屋を出た春菜は純一に声をかけられて用具室へと向かった。


「清掃道具はここに一式ありますから、必要なものを取っていってください。今日はこれから浴室の清掃をしてもらいますから、ブラシと洗剤。それと鏡用のスポンジが必要です」


純一に言われて必要なものを青いバケツに入れていくが、頭の中ではさっきヒロミに言われた言葉が何度も繰り替えされていた。


純一を狙っている子なんて山のようにいる。


隣にいる純一を見ていてもそれは納得できることだった。


アイドル並みに整った顔をしている旅館の若旦那なんて、ほって置かれる方がおかしい。


ヒロミも純一を狙っている1人だということも、春菜は女の勘ですでにわかっていた。


「基本的に温泉の清掃は夜間に行いますが、今日は体験していただくために炭酸風呂の清掃をしていただきます」


風呂場に一歩足を踏み入れると湯気で視界が歪んで見えた。


「まずはお湯を抜いて、その間に桶やシャワーノズル、床の清掃をします」


言われるがままに手を動かしているだけだったが、やっているうちになんとなく手順をつかめてきて体が勝手に動き始める。


鏡を掃除するときなど純一に教えられなくても洗剤の加減や、スポンジの力加減がわかっていた。