甘い毒に溺れ堕ちて

「ないないない! 焼いてないから!」

「ほんとに?」

「ほんとにほんと! そういう意味で言ったんじゃなくて……」

「じゃなくて?」



こてんと首を傾げた藍くん。

可愛い子だとあざとくなりすぎる仕草も、藍くんがやるとあら不思議。

母親似の優美な顔立ちと角度が浅いおかげで、上品な色気を醸し出している。



「どんな意味なの?」

「ええと、その……ネガティブな意味ではなくて……」

「ポジティブな意味なんだね。良かった」



安心したように笑った彼が、「それで?
それで?」と顔を近づけてきた。


ふわりと舞う、清涼感のある香り。

正体がシトラスだと知ってからドキドキしなくなったけど、久しぶりに嗅いだのと、ここで過ごした時の日々が一斉によみがえって……。



「一途に思われてていいなぁ、私もあんなふうに愛されてみたいなぁ……って」

「それって……」

「……好き、だからだよ」