甘い毒に溺れ堕ちて

「最初の頃は鏡を直視できなかった。生え際まで綺麗に脱色されてるんだよ」

「砥上さん、すごく丁寧だもんね」

「おかげで違和感ない仕上がりにしてくれた。自分でも案外馴染んでるじゃんって。凌介さんも似合ってるよって褒めてくれた。……父さんからは、謝られたけど」



胸が張り裂けそうに痛む。


提案された時、どう思ったのだろうか。


妻には愛想を尽かされ、息子からは赤の他人として接してほしいと懇願されて。

唯一の肉親のためにとはいえど、了承に至るまでの間に、計り知れないほどの葛藤と苦悩があったんだと思う。



「それでも全部自分で決めたことだから。やるからには貫き通したかった。……けど、あの後、もう染めるのはやめてくれって言われてさ」

「……」

「気持ちはわかるんだよ。ちょうど面談の時期だし。大人になっても続けるつもりなのかって。けどさ、俺がどんな気持ちで染めたのか考えたことあんのかよって」

「……」

「そもそも父さんが母さんのことちゃんと見てなかったせいじゃん、お世話から買い物までなにからなにまで全部母さんに任せたせいじゃねーかよって。一方的に責めまくった」

「……」

「……馬鹿だよな。あんだけ後悔したくせにまた同じこと繰り返すって。歳だけ食ってなんも成長してない」

「……」

「……いいよ、我慢しなくて」

「っ……」