甘い毒に溺れ堕ちて

呆然と立ち尽くしていると、コハクさんに耳打ちした藍くんが、私の手をすくい取って……。



「送ってく」

「えっ、あっ」



小銭を握らせたかと思ったら、そのまま手を引っ張られて外へ。

おまわりさんたちに会釈し、速歩きで立ち去る彼と一緒に駐車場へと向かう。



「あ、あのっ」

「何?」

「い、いいの?」

「うん。お詫びも兼ねてるから。小銭1枚じゃ足りないくらいだけど」



いやいやそんな。私はただ当たり前のことをしただけで……って、500円玉のことを言ってるんじゃなくて。



「置いて帰っちゃっていいの……?」



自転車に鍵を挿し込む彼に再度確認を取る。


自由人に見えて気遣いもできる藍くんのことだ。

2人揃って切羽詰まっていたら、相手に不安と罪悪感を与えかねない。

だから自分だけは冷静でいようと、懸命に平常心を保っていたのかもしれない。