甘い毒に溺れ堕ちて

私の存在に気づいた彼が勢いよく立ち上がり、頭を直角に下げた。



「うちの母がご迷惑をおかけしてすみませんでした」

「いえいえ! 迷惑だなんて全然っ!」



首を横に振り、顔を上げるよう促すけれど。

私の意識は、開けっ放しになったドアの外で驚愕の表情を浮かべる金髪の彼に集中していて──。



「本当にありがとうございました。これ、お茶の代金です」

「いやそんな! 大丈夫ですよ! あの、もしかして、ら──」



“藍くんのお父さんですか?”

その先の問いかけは、細くしなやかな指によって封じ込められてしまった。



「ありがとう。助けてくれて」

「っ、あぁ……ううん」



唇から人差し指が離れ、止めていた呼吸を再開させる。


お得意の不意打ちを食らったせいで、頭が真っ白になってしまった。


なぜ口封じをしたのか、なぜ彼だけ外で待機していたのか。

詳しい事情はわからないけれど……コハクさんと、このおばあさんが親子ということだけはわかった。