「本当、可愛すぎ。美来には敵わねぇよ」

 不意打ちのキスは驚いたけれど嫌ではなくて。

 ドキドキ高鳴る鼓動が早くなった。

「……そんな幹人くんに、あたしも敵わないんだけど」

「ん? なんだって?」

 小さな呟きは聞こえなかったのか、聞き返される。

 けれどあたしは首を横に振って「何でもない」と答えた。


 どんどんカッコイイところが増えていく幹人くん。

 あたしの方がドキドキさせられることの方が多くなってるように思えて、ちょっと悔しかったから。

 だから、あたしの方が敵わないってことはまだ黙っていることにした。


 そうしてまた二人で走る。

 手に幹人くんの体温を感じて思った。


 あたしが選んだのは、幹人くん一人だけ。

 だから、他の人達からは逃げ続けるよ。

 だって、あたしは《かぐや姫》だからね。



『地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~』 完