「えー? せっかく今日は美来と遊べると思ったのにー」

 遥華は唇を尖らせて不満をアピールしていたけれど、「ま、仕方ないか」と最後は納得していた。

「ラブラブな二人を邪魔するわけにもいかないもんね」

 そうして笑顔を見せてくれた遥華は、「次は絶対遊ぼうね!」と念を押してくる。

「うん、分かった」

 何はともあれ、今は逃げた方が良さそう。


 坂本先輩、八神さん、如月さんにつかまると面倒そうだもん。

「行くぞ、美来!」
「うん!」

 繋いだ手を引かれ、あたしは幹人くんと走った。


 みんなが銀星さんたちに足止めされているのをチラリと見てから、あたしは前を走る幹人くんに呼びかける。

「幹人くん!」

「なんだ⁉」

 走りながらでもちゃんとあたしの方を見てくれた彼に、言葉を送る。


「好きだよ! あたしが一緒にいたいのは、幹人くんだけだから!」

 あたしが幹人くんを好きでいる限り、離さないと言ってくれた彼に応えるように伝える。

 離さないで。
 しっかりあたしを捕まえていてって。

「っ⁉ あーもう!」

 幹人くんは耐えられないと言った様子で声を上げると、軽くかがんで顔を近付けてきた。


 チュッ


 走りながら器用にあたしの唇を奪った幹人くんは、「俺も好き」と囁いて離れる。