「孝紀は自主的に退学届けを出しに来たよ」

 ハロウィンパーティーの余韻も落ち着き、諸々の処理が終わった頃の放課後。

 あたしは生徒会室で稲垣さんがどうなったのか話を聞いていた。


 稲垣さんの家が所有している企業は最終的に八神家の企業の傘下に入ることで話がまとまったんだそうだ。

 八神家と如月家の所有する企業の業務提携は、稲垣さんの兄の邪魔も手伝って中々進まなかったらしい。

 元々乗り気だったのは提案してきた八神家側の方ばかりで、如月家側は少し渋ってたというのもあるとか。
 だから二年以上経っても成立していなかったらしい。

 そんなわけで、業務提携自体を取りやめて同系統の研究を進めていた稲垣家の企業を傘下に入れることになったとか。

 稲垣さんとその兄のしでかしたことを内密にする代わりに、というのもあったみたい。


「あと、君を敵視していた鈴木香梨奈という女子生徒も自主退学したね」

「そう、なんですか?」

「ああ。先生の話では気落ちしつつもどこかスッキリしたように見えたらしいけれど」

 ハロウィンパーティーの日から全く見ないなと思っていたら退学していたなんて……。

 会いたいわけじゃなかったけれど、最後に見た彼女の様子を思い出すと少しだけ心配になる。

 でも先生の話を信じるなら、彼女は彼女なりに自分で折り合いをつけたのかもしれないって思った。