「美来……」

 甘い吐息と共に名前を呼ばれて……。
 熱っぽい眼差しがあたしを見下ろして……。

 甘い旋律を奏でるBGMが、後押しをしているようで……。


 幹人くんの顔が近付いて来るのと比例して瞼を閉じる。

 見えなくても彼の吐息を感じてまた鼓動が早まった。

 触れ合う寸前、幹人くんの唇が動く。


「一生、大事にする……」

 あたしにだけ聞こえる囁き。

 次いで触れた唇は柔らかくて……。

 寸前の囁きの言葉に胸がいっぱいになって……。

 心の奥底から、幸せがあふれ出した。


 一生大事にするなんて……それこそ結婚式の誓いみたい。

 でも、そう言ってくれる幹人くんをあたしも大事にしたいって思う。


 初めてのキスをしたあたしたちは、ゆっくり離れるとはにかみ合う。

 するとどこからか「結婚式みたい……」なんて呟きが聞こえてきて、体育館中が湧いた。

 ビックリしたけれど、「おめでとう!」なんて祝いの言葉まで聞こえてきて、その後の体育館はまるで披露宴会場の雰囲気になる。

 奏の視線が何とも言えないものになっていたけれど……。


 どうなることかと思っていたハロウィンパーティーは、そんな一風変わった盛り上がりを見せて終わりを告げた。