前は、色々とヤバくなりそうだから出来ないと言われた唇へのキス。

 それを今はむしろしたいと言ってくれる。

「や、でも人前は嫌だよな? 大丈夫、我慢すっから」

 でも、あたしを思って我慢するという幹人くん。
 そんな彼に、あたしは大胆にも「……いいよ?」と口にした。

「美来?」


 人前は流石に恥ずかしすぎる。……って、いつもなら言っていたと思う。

 でも、今は色んなことがあって気分が高揚していて……。
 それに今を逃したら、また照れて出来なくなっちゃうんじゃないかっていう不安もあって……。

 何より、何度も望まない形で奪われた唇を……大好きな人に貰って欲しかった。

 本当のファーストキスを……幹人くんに貰って欲しかった。

 だから……。

「キス、してもいいよ?」

「っ、美来……?」

 自分から言うのは恥ずかしかったけれど、でも我慢なんてして欲しくなかったから……。

「その……あたしも幹人くんと、キスしたいから……」

 だから、あたしの望みも口にした。