地味同盟~かぐや姫はイケメン達から逃れたい~

 カッコイイ幹人くんに惚れ直してドキドキしていると、床に伏したまま稲垣さんが恨み言を呟き始めた。

「幹人、お前まで……。くそっ! ここまで来て諦めるわけには――」

「そこまでだよ」

 この状況でも諦めようとしない稲垣さんだったけれど、また別の声がして彼の言葉を止める。

 みんなの視線が現れた人物――坂本先輩に集中した。


 坂本先輩は神妙な面持ちでスマホを持ちながら近付いて来る。

「こういうわけです。聞きましたよね? 稲垣さん」

 床に倒れている稲垣さんにではなく、持っているスマホに語りかける坂本先輩。

 通話状態になっているようだ。


 でも、“稲垣さん”ってことは――。


『……孝紀……お前は……お前たちは、なんてことをしてくれたんだ!』

 怒りと悲壮感に満ちた壮年の男の人の声がスマホから発せられる。

「っ!……父、さん?」

 稲垣さんのつぶやきに、やっぱりと納得する。

『どうしてこんなっ……ああ……』

 稲垣さんのお父さんの声は焦燥の言葉ばかり。
 その様子だけで、彼は稲垣さんが何をしていたのか知らなかったんだと分かった。

「父さん、だって……こうでもしないと会社が……」

『だとしても! やっていいことと悪いことの区別もつかないのか⁉』

「っ!」

 電話越しに怒鳴られ、稲垣さんはそれ以上何も言えなくなっていた。