駆けつけてくれた幹人くんは、あたしを見て安堵したように笑顔を見せる。

 でもすぐにその表情は険しくなった。

「てめぇ……美来から離れろ」

 橋場を睨んだまま、幹人くんは様子をうかがうようにゆっくり足を進める。


 睨まれた橋場は、「ああん?」と唸るように不機嫌さを表して幹人くんを見た。

「誰だよてめぇ。ったくいいところだったのによぉ」

 そして幹人くんの言葉に相反するようにあたしの腰をグッと抱く。

「美来、コイツお前の何なんだよ」

「幹人くんはあたしの彼氏よ! もう、離して!」

 更に密着した橋場の胸を押したけれど、やっぱり単純な力じゃあ敵わない。

 そんなあたしの態度と言葉にもっと不機嫌になった橋場は、その昏い目をスッと細めた。


「ああ? 彼氏だぁ?」

 視線を幹人くんに向けて、彼を値踏みするように見る。

 ひとしきり幹人くんを観察した橋場はハッと嘲るように笑った。

「ま、でも自分の女一人抱くことも出来ねぇヘタレ野郎だろ? お前を見てりゃあ誰にも抱かれてねぇことくらい分かるからな」

「それは……」

 どうして見ただけで分かるのかと思うけれど、事実だから明確に否定する言葉が出てこない。