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 第二音楽室についた俺は、ドアを開ける前から中が騒がしいことに気付いた。

 何か問題でもあったか? と軽い気持ちでドアを開けて聞こえた言葉に、俺は耳を疑う。


「美来がいなくなったってどういうことだ⁉」

 誰かと電話しているらしい八神さんが焦りを隠しもせず叫んでいた。

 冗談ではありえない様子に、血の気が引くような感覚がする。


 美来が、いない?

「連絡つかないって……何が⁉」

 電話の相手を怒鳴りつける八神さんに、俺はすぐに近付いた。

「美来がいないってどういうことっすか⁉」

 電話中なんて気にせず問い質す。

 どういうことなのか、一刻も早く知りたかった。


「あ? ああ、幹人。お前美来を見なかったか?」

「食堂で見かけたのが最後っすよ。どうしたって言うんっすか⁉」

 逆に聞き返されて、イライラしながらも答えると電話の向こうの人物が何か言ったらしい。

「ん? ああ、そうだな」

 相手にそう返事をした八神さんは、スマホを耳から離しスピーカーアイコンをタップした。

『久保くん、美来さんが着替えに来ないんだ』

 スマホから焦りの滲んだ生徒会長の声が聞こえてくる。