《シュピーレン》は顔出しをしていない。
 奏は本当に歌声だけで勝負しているから、美形の部類に入る自分の顔は絶対に(さら)さないと言い張っている。

 だから梅内さんは当然奏の顔を知らない。


 これで本来の奏のままだったら予想よりカッコイイとなって幻滅されることは無いだろう。

 でも今の地味な格好だったら?


 幻滅……するかどうかは分からないけれど、この地味男が? とかは思われそうだ。

 この喜びの笑顔が渋くならないかと不安になる。

 でも……。


「後で会わせてね!」

 と無邪気に喜ぶ彼女にNOとは言えなかった。

「うん、分かった」

 まあ、もし残念がったらその時はその時だ。

 そう思い直し、あたしはその不安に蓋をした。




 そうして梅内さんが話しかけてくれたおかげで、初日からボッチというのは避けられた。

 本来――というか、よくマンガとかでは転校生は珍しがられて初日はクラスメイトが群がったりするものだと思う。
 でもやっぱりそれはマンガの中だけの事なのか、それかあたしの地味な格好が原因なのか、梅内さん以外の人があたしに近付いて来ることは無かった。


 梅内さんは自分の友達もいるだろうに、今日はあたしに付きっきりで色々教えてくれている。