足早に教室に戻ると、丁度しのぶも戻って来ていた。

「あ、美来はこれから着替え?」
「うん、奈々と香はもう行っちゃったの?」
「うん、放送部は結構忙しいみたい。ま、楽しそうでもあったけれどね」

 香と奈々は放送部の方で色々やることがあるらしく、仮装はしないけれど早くから準備するため食事を終えて行ってしまったらしい。

 しのぶはそんな二人につき合って早く食べたけれど、仮装もしないから一人でどうしようかと思っていた所だそうだ。


「せっかくなんだからしのぶも仮装すればいいのに……」

 結構百均で猫耳や三角帽子を買って簡単な仮装をしている子もいる。
 しのぶならそれらに少しアレンジを加えるだけで良い感じの衣装が出来ると思うのに……。

「でも香も奈々も別行動だし、美来は豪華衣装を着て久保くんと歩くんでしょう? あたし一人は流石に恥ずかしいよ」

「あ、そっか……。でもそれなら奏と一緒に仮装すれば良かったんじゃ……」

「ううん、いいの。奏最近忙しそうだし、衣装用意する余裕ないみたいだったし」

「あ……」

 笑顔で話すしのぶは本当に気にしていないみたいだったけれど、その奏の忙しさは多分あたしを守るためにノートパソコンで何かをしているからだ。

 あたしのことなんだから自分でも少しくらいはやるよと申し出たこともあるけれど、SNSもやっていないあたしが手伝っても悪化する未来しか見えないって拒否されてしまった。