「どっちも似合いそうだね。幹人くんの衣装はどっちなの?」

「俺は吸血鬼だった。八神さんの方が吸血鬼とか似合いそうだと思うんだけどよ、タキシードとかしっかりした服装学校でまでしたくないとか言って狼男選んでた」

「へぇー……」

 そんな理由を口にするってことは、学校以外ではそういう服装もしているってことなんだね。

 ビシッと決めた八神さんってなんだか想像できないな。

 っていうか、別にハロウィンの衣装なんだから着崩してもいい気はするけど。


 まあ、それよりも。

「じゃあ幹人くんの衣装がしっかりしたタキシードってこと? なんか新鮮。見るのが楽しみだな」

 ワクワクと、少しのドキドキを混ぜて期待の眼差しを向ける。

 すると少し照れた幹人くんは「こっちのセリフだっての」とあたしの頬を親指の腹で撫でた。

「美来の天使姿とか、似合うに決まってる。楽しみだけど、俺心臓持つか不安だな」

 そうして笑うと、額にチュッとキスを落とされた。

「っ! 不意打ちだよ、幹人くん……」

 されると思っていないときに触れてくる唇にはビックリする。
 ドキッと心臓が跳ねて、そのまま鼓動が優しく早まる。

 特訓の成果なのか、頬や額にならあまり照れずにキスをしてくれるようになった幹人くん。

 でも照れていない幹人くんは、言葉も行為もひたすら甘くてあたしの心を翻弄する。

「もう、あたしの方が心臓持つか不安だよ……」

 額を押さえながら、あたしは照れ隠しの文句を口にした。