「ええぇ?」

 十倍とかは流石に言い過ぎなんじゃ……。


「はうっ!」
「ああ! 宮根先輩! お気をしっかり!」

 しかもなんだか教室の出入り口が騒がしい。

 何事かと思ったら人が集まっていて、宮根先輩がドアに寄りかかるように倒れ込んでいた。

 何事⁉ と思っていると、ゆるゆると顔を上げた宮根先輩は頬を染めながら口を開く。

「ああ……美しい上に可愛らしいなんて……美来様、尊い……」

「ええぇ……」

 さらに困ってどうしようかと視線を逸らすと、反対側のドアにも人が集まっていた。

 こちらにはすみれ先輩がいて……。

「美来さん、きゅわわわん……」

 頬を上気させて目を潤ませるほどに気が昂っている様子だった。


「……」

 これ、どう収集つければいいんだろう?

 途方に暮れつつも、あたしはとりあえず幹人くんを落ち着かせる方を優先したのだった。