不思議だね? と奏に言うと。

「それほど不思議じゃないだろう。俺はお前ほどのカリスマはないからな」

 なんて答えが返って来た。

「カリスマって……」

 あたしもそんなカリスマなんてたいそうなもの持ち合わせてないと思うんだけどなぁ……?

 やっぱり不思議だよ、と思いながらあたしたちは教室へ向かった。


 教室で鞄の中のものを出したりしているうちにしのぶたちのも登校してくる。

 三人とまた他愛もない話をしていると、密かに待っていた人が隣の席に来た。

 その気配に彼を見ると、トクンと優しく心臓が跳ねる。


「……はよ」

 いつもと同じ朝の挨拶が、いつもより頬を赤くさせた幹人くんの口から出る。

 照れ臭そうな彼に、昨日のことを色々思い出してしまう。

 抱きしめ合ったこと。
 額にキスされたこと。
 呼び方を変えたこと。

 愛しいっていうのかな?

 胸に温かい感情が宿って、少しでも近付きたいと思ったあたしは立ち上がって幹人くんの目の前に立った。


「おはよう、幹人くん」
「っ!」

 笑顔で彼を見上げて挨拶を返すと、彼は息を呑み口元を押さえる。

 グゥ、と唸る様に喉が鳴ったと思ったら、覆った手の向こうからこもった声が聞こえた。